私の本棚

出会った本の数だけ自分をアップグレード! 赤羽氏の「ACTION READING」を基にした 読書記録のブログ

『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子(1981、改訂版2008)

「きみは、ほんとうは、いい子なんだよ。」
これは、トットちゃんが小林校長先生に言われ、ずっと心の中で支えにしてきた言葉だ。

私もこれまでの人生、沢山の先生に出会い、育てて頂いた。
けれど、人生の指針になるような言葉はあまり覚えていない。感度の高い学生だったらきっと何かしら刺さる物があったと思うのだが。自分の記憶力を呪いたい。

さて、この本は黒柳徹子さんの児童期について、通っていたいトモエ学園のユニークな教育方針やお友達を交えて書いた回顧録である。現在の黒柳さんのご活躍を拝見すると、小学校を退学になった事や後先考えず突き進んでしまう事など ”やはり黒柳さん!小さい時から普通ではなかったのですね!!”と疑いもなく良い意味で賞されるだろう。しかし、子育てとは先が見えないトンネルを、どこに向かっているかもわからない状態で進み続けるようなもの。私がトットちゃんのお母さんだったら、毎日ため息と怒号の連続だったかもしれない。

メディアに出てくる子役は可愛くてお利口さん(に見える)。作られたものと現実のギャップが大きいのは当然の事なのに、初めて子育てする人はそれを受け入れられずに狼狽える。自分の育て方が良くないのではないか、学校に入っても馴染めないのではないか。周りの子みんながわが子よりも優秀に見えて、このままではダメだ、、、このままでは、、、と焦る。余裕がないのはいつも大人の方だ。子供は柔軟だから、大人の束縛を受け入れてしまう。自分の個性を手放す事と引き換えにして。

この作品は推薦図書になったり中学入試問題に採用されたりと、小学校高学年あたりの子から触れる機会があるのだが、母親11年目の私から言わせて頂くと、妊娠希望や妊娠中のお母さんに是非とも読んでほしいと思う。
私は自分の児童期の記憶が断片的にしかない。でも、幸い黒柳さんは当時の出来事やその時の感情の記憶がとても鮮明で、パッと見ると子供の問題行動だと捉えられてしまう事にも、そこには大人が気付かない”小さな意思”があるのだと教えてくれる。

それから、当時では受け入れられなかったであろう事(ご飯はおしゃべりをしながら楽しく食べよう!とか女の子には優しくしよう!とか)でも、校長先生が外国で見聞きし、これからの子供たちの世界に必要だと感じたものを積極的に取り入れていく姿勢も大変参考になる。

トットちゃんが教えてくれた ”こどもごころ” を忘れないように記録しておく。
(「」の中は引用)

〇落語が楽しくてたまらないトットちゃん。大人はこんな難しい話を子供が理解できるのか?と思うかもしれないけれど、「子供はどんなに幼く見えても、本当に面白いものは、絶対に、わかるのだった。」

〇学校のみんなで温泉旅行に行った時の事。学校の外は未知の世界。様々な困難にぶち当たる。「そのたびに、みんなは、どうしたら、いちばん自分が役に立つか、考えた。」

〇小林校長先生のリトミック導入への思い:「文字と言葉に頼りすぎた現代の教育は、子供達に、自然を心で見、神の囁きを聞き、霊感に触れるというような、官能を衰退させたのではないだろうか?世に恐るべきものは、目あれど美を知らず、耳あれども楽を聴かず、心あれども真を解せず、感激せざれば、燃えもせず・・・の類である。」

トットちゃんママの思い:「それにしても、大人なら、疲れるだけで、なにが面白いか、と思えるこういうことが、子供にとっては、本当に楽しいことなんだから、なんて、うらやましいこと・・・。」

この本の中で、特に好きな場面は「大冒険」と「運動会」。何度読んでも涙が出る程心が動かされる。
友達の為に自分は何が出来るのか最大限考え抜く。
生まれ持ったハンディキャプを、負け惜しみではなく心から”自分の個性だ”と言える。
大人の皆さん、子供たちが子供たちらしく大人になった世界はどんなだろうかと考えると、自然と笑顔になりませんか?


(買切) 新装版・窓ぎわのトットちゃん